十八世中村勘三郎七回忌追善歌舞伎
歌舞伎座が新しく変わってから初めての観劇。
と言うよりも、勘三郎さんが亡くなられてから、歌舞伎を見に行っていなかったことに気づいた。
全く意図はなく、ただ、なんとなく。
今回、泣くような演目ではないのに、泣けた。
涙が勝手に出てきた。
夜の部の演目は
「宮島のだんまり」
「義経千本桜 吉野山」
「助六曲輪初花桜」
玉三郎さんの静御前が初音の鼓を構えたとき、昔見た勘九郎さん(まだ、勘三郎を襲名していなかったと思う。それほど昔)の源九郎狐がよぎった。
鼓の音にピクピク耳が動き、奇想天外なところから現れたり、駆け抜けたり。
走り回る歌舞伎に驚いた。
その忠信こと源九郎狐を演じるは中村勘九郎。
故勘三郎さんのコケティッシュな部分は引き継いでいるが、踊りはお父様よりキリっとして好きだ。
涙が溢れる。
取りを飾るは「助六曲輪初花桜」
助六と言えば成田屋さんの十八番だが、各家が「助六」を持っている。
今回は松島屋さんの「助六」
生前、勘三郎さんが助六は「50はまだ早い、60になったらやろう」「そのときは教えて」と仁左衛門さんに言っていたそうだ。
その思いは成し遂げられず、次世代に引き継がれた。
「よく見とけ」とばかりに貫禄がある助六だ。
七之助の若い気っ風のいい揚巻もかわいい。
脇を固めるのは満江の玉三郎さん。本当に母親のような気持ちで揚巻を見つめている。
満江は助六の母になる。このような役を玉三郎さんが。と嘆くかたもいらっしゃるが、おじ様がたの愛をひしひしと感じた。
みんなで中村屋をもり立て、支え、そして歌舞伎全体のてこ入れをしている。
これが何百年も続いた由縁かもしれない。
盛り上がったのは彌十郎さんのセリフ。
さすが、通人。
満場の拍手にまた、泣けた。
角切銀杏が霞んで見えない。
説明するのも野暮だが、角切銀杏は中村屋の定紋
銀杏の学名はGinkgo biloba
bilobaには「2つの裂片 」という意味がある。
二人の中村屋が作り上げる角切銀杏、行方が楽しみである。
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